BMW 7シリーズ G11 740iのエアコンが効かなくなった経験はありませんか?
突然車内の冷房性能が低下し、暑い季節に快適なドライブができなくなるこのトラブルは、エバポレーターの故障が原因かもしれません。
高級車である7シリーズのオーナーにとって、エアコントラブルは快適性を大きく損なう問題です。
実際に、真夏のドライブ中にエアコンから冷風が出なくなり、BMW正規ディーラーで「エバポレーター故障」と診断されるケースが少なくありません。
この記事では、エバポレーター故障の原因から対策、修理方法まで、BMW 7シリーズ G11 740iオーナーが知っておくべき情報を専門知識に基づいて解説します。
この記事を書いたスタッフ
GNARLY automobile(ナーリー オートモービル)のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます!私はこの大好きなBMW/MINI(ミニ)の整備を通じて、お車のサポートは勿論、お客様とより良いお付き合いをさせて頂ければと思っております。その様な関係を築ける様、精一杯のサービスをご提供させていただきますのでお気軽にご相談ください。
BMWグループ認定 保有資格
- BMWテクニシャン資格
- MINI(ミニ)テクニシャン資格
目次
エバポレーター故障の基本知識
BMW 7シリーズ G11 740iのエバポレーターエバポレーターは、エアコンシステムの中核部品で、クーラーガスが蒸発する際に周囲の熱を奪い、冷たい空気を車内に送り出す役割を担っています。
BMW 7シリーズ G11 740iのような高級車でも、使用年数や走行環境によってエバポレーターは劣化し、最終的に故障に至ることがあります。
BMWの保証プログラムでは、新車購入後3年までの基本保証が適用されますが、それ以降は有償修理となるケースがほとんどです。
近年では気温もかなり上昇してきていますので、車内温度はすぐに上がってしまいます。カーエアコンが不具合をおこすと快適性を失うだけでなく車内温度上昇により人体に害を及ぼしてしまう可能性もありますので、シーズン前にガス圧などの点検をしておくと良いと思います。
- エバポレーターはダッシュボード奥深くに設置されており、交換には内装の大規模な分解が必要
- 冷媒漏れが発生すると、環境への影響だけでなく冷房性能の急激な低下を引き起こす
- BMW 7シリーズ G11モデルでは、2016年から2018年製造の車両でエバポレーター故障の報告が比較的多い
- 故障時の修理費用は部品代と工賃を合わせて30〜50万円程度となることが多い
エバポレーターが故障した際の技術的な解釈


蛍光剤を使用し紫外線ライトで漏れ箇所を特定しているエバポレーターの様子BMW 7シリーズ G11 740iのエバポレーター故障は、主に冷媒漏れによって発生します。
BMW公式サービスマニュアルによると、エバポレーターコアに微細な亀裂や腐食が生じることで、高圧の冷媒R134aが漏れ出す現象が確認されています。
G11モデルのエバポレーターは設計構造上コアの接合部に、振動や経年劣化によりクラックが入り漏れ出してしまいます。
故障診断の方法は、通常、冷媒漏れは専用のリークディテクターを使用して検出し、漏れが確認された場合はファイバースコープを使用して目視点検によりエバポレーター自体に問題があると断定し、ユニット全体を交換します。
なお、エバポレーターの素材には防食アルミニウム合金が使用されており、外部環境や冷媒の化学的性質によって腐食が進行することもあるため、他の部品に腐食が浸食しないためにも診断結果が分かれば早めの交換をおすすめします。
エバポレーターの故障が発生する典型的なケース
BMW 7シリーズ G11 740iでエバポレーターの故障が発生する典型的なケースには以下のようなものがあります。


BMW 7シリーズ G11 740i- 長期間の使用による経年劣化:約4〜6年以上使用した車両で発生率が高まる
- 高温多湿環境での頻繁な使用:日本の夏季のような高温多湿の環境では、結露によるコアの腐食が促進される
- 製造上の不具合:一部の製造ロットにおいて、エバポレーターの素材や溶接部分に品質のばらつきがある
- 冷媒圧力の急激な変化:エアコン使用方法の誤り(高温時の最大冷房での急激な起動など)による負荷
特に日本国内においては、新車登録から7年以上経過したG11モデルに関して、エアコンの不具合による診断依頼が多く寄せられていると感じます。
したがって、走行距離50,000km以上の車両での発生率が高いのでエアコンの効きが悪いと感じた際は点検するのが良いでしょう。
エバポレーターの故障と紛らわしい類似故障のご紹介
BMW 7シリーズのエアコントラブルでは、エバポレーター故障と混同されやすい問題がいくつか存在します。
正確な診断のため、以下の比較表を参考にしてください。


ファイバースコープでエバポレーターを点検している様子症状/特徴 | エバポレーター故障 | エキスパンションバルブ不良 | コンプレッサー故障 |
---|
冷房性能 | 徐々に低下し、最終的に冷えなくなる | 間欠的若しくは恒久的に冷えなくなる | 突如完全に冷えなくなる |
---|
冷媒圧力 | 低圧側・高圧側ともに低下 | 高圧側が異常に高くなる | 高圧側の圧力が上昇しない |
---|
診断方法 | リークディテクターで漏れを検出 | 冷媒圧力計での測定 | 冷媒圧力計での測定・目視により点検 |
---|
修理難易度 | 非常に高い(ダッシュボード分解が必要) | 中程度 | 中程度 |
---|
故障頻度(G11) | 比較的低い | 低い | 高い |
---|
判別ポイントとして、冷媒圧力計による冷媒圧力測定とリーク検出が最も信頼性の高い方法です。
また、エバポレーター故障の場合、冷媒が漏れ出した後に補充しても短期間で再び冷えなくなるという特徴があります。
一方、エキスパンションバルブやエアコンコンプレッサーの問題は、冷媒量が適正でも冷房性能に問題が生じます。
エバポレーターの故障を修理するプロセス
BMW 7シリーズ G11 740iのエバポレーターの故障を解決するプロセスは複雑で時間がかかります。
まず、BMW正規ディーラーまたは認定整備工場での正確な診断が必要です。
診断では、専用の冷媒リークディテクターや圧力計を使用して、エバポレーターからの冷媒漏れを確認します。
漏れが確認された場合、エバポレーター交換作業が実施されますが、これには以下のステップが含まれます。


エバポレーターの修理でダッシュボードを分解している様子- ダッシュボードの完全分解
- エアコンシステムからの冷媒回収
- 故障したエバポレーターの取り外し
- 新品エバポレーターの取り付け
- ダッシュボードの再組み立て
- 各種センサー・コンピューターのリセットと再学習
- システムの真空引きと冷媒の再充填と機能テスト
この一連の作業には、通常3〜5日間を要し、BMW正規ディーラーでの修理費用は部品代(約15〜20万円)と工賃(約10万円)を合わせて、20~30万円程度となることが一般的です。
- 修理は必ずBMW認定整備士によって行うべき(特殊工具と専門知識が必要)
- 純正部品もしくはOEMメーカーの部品の使用が推奨される(社外品は品質や耐久性に問題がある場合がある)
- 修理後はエアコンシステム全体の点検と、必要に応じてヒーターコアやエアコンフィルターも同時交換することが望ましい
- 冷媒の種類と量は必ず車両仕様に合わせる(R134a、R-1234yf、規定量の厳守)
エバポレーターの故障を予防するための予備知識


エアコンをメンテナンスしている様子BMW 7シリーズ G11 740iのエバポレーター故障を予防するためには、エアコンシステム全体の適切なメンテナンスが不可欠です。
エアコンは定期的に使用することで内部の潤滑油が循環し、シールやガスケットの劣化を防ぎます。
また、エアコンフィルターの定期交換(1年または約10,000km毎)は、エバポレーターへの汚れの蓄積を防ぎ、腐食リスクが低減できるので、エアコンフィルターの定期交換は高額修理の予防にもなります。
これに加えてシーズン前に冷媒圧力などをしっかり点検・補充、必要であれば添加剤などを使用すると良いでしょう。
これらの定期メンテナンスにより、エバポレーター故障のリスクを大幅に低減できることでしょう。
- エアコンフィルターを1年または10,000km毎に定期交換する
- 冬季でも月1回程度はエアコンを作動させる
- エアコン使用後は送風モードで5分程度運転し、エバポレーター内部の湿気を除去する
- 2年に1回程度、エアコンシステムの点検と必要に応じた冷媒ガス、添加剤補充を行う
- 冷房効率の低下や異臭など、異常の兆候があれば早めに点検を受ける
エバポレーターの故障に関するよくある質問
- エバポレーター故障の初期症状はどのようなものですか?
初期症状としては、冷房効率の緩やかな低下、エアコン作動時の冷えるまでの時間延長、車内に漂う異臭(カビ臭またはコンプレッサーオイルの独特な臭い)などが挙げられます。これらの症状に気づいたら、早急にBMW正規ディーラーでの診断をお勧めします。
- エバポレーター交換後の保証期間はどれくらいですか?
BMW純正部品とBMW認定整備士による交換作業の場合、部品と工賃に対して2年間の保証が適用されます。ただし、この保証は正常な使用状態での故障に限定され、事故や改造、不適切な使用による故障は対象外となります。BMW正規ディーラー以外での修理の場合は、整備工場の保証ポリシーに準じます。
- エバポレーター故障は走行に影響しますか?
エバポレーター故障自体はエンジン性能や走行安全性に直接的な影響を与えませんが、冷媒漏れが進行すると以下の点に注意が必要です。
- クーラーガスは通常の条件下では不燃性であるが、高温・高圧にすると可燃性になることがあるため、大量漏れの場合は安全上のリスクとなる可能性がある。またクーラーガスと一緒に漏れてくるコンプレッサーオイルにも可燃性があるため注意が必要です。
- 漏れたクーラーガスが電装部品に触れるとオイルの付着などにより故障の原因となる可能性がある
- 長期間のエアコン不調はドライバーの集中力低下に繋がり、間接的に安全運転に影響する場合がある
- 一般整備工場での修理は可能ですか?
技術的には可能ですが、BMW 7シリーズ G11のようなハイエンドモデルのエバポレーター交換には、専用診断機器や工具、詳細な整備マニュアルが必要です。また、交換後のエアコンコントロールユニットの再学習には専用ソフトウェアが必要となるため、費用面では一般整備工場の方が安価な場合もありますがBMW正規ディーラー若しくはBMW専門の整備工での修理が強く推奨されます。
- エバポレーター故障と室内の悪臭は関連していますか?
はい、関連性があります。エバポレーターの表面に結露した水分と空気中のホコリや微生物が結びつくと、カビやバクテリアが繁殖しやすい環境となります。これが室内に放出される冷気を通じて「エアコン臭」として感じられます。この悪臭はエバポレーター故障の初期症状の一つですが、単純な汚れの蓄積による場合もあるため、専門的な診断が必要です。
BMW 7シリーズ G11 740iのエバポレーター故障とは?原因と対策のまとめ


当整備工場でエバポレーターを修理している様子今回は、エバポレーターの故障の基本知識から技術的解釈、典型的な発生ケース、修理プロセス、予防策まで幅広く解説しました。
BMW 7シリーズ G11 740iのエバポレーター故障は、車両の快適性に大きく影響する重要な問題です。
エバポレーターの交換は交換までにかなり多くのプロセスがある修理であるため、専門知識と特殊工具を持つBMW認定整備士による対応が不可欠です。
また、エバポレーター故障の予防には、定期的なエアコンシステムのメンテナンスが重要であり、異常の兆候を早期に発見することで高額な修理費用を回避できる可能性があります。
今回紹介しきれなかった関連トピックとして、BMW 7シリーズのエアコンシステム全体の構造や、クーラーガスR134aの特性と環境影響についても理解を深めることで、愛車の長期的な維持に役立つでしょう。
当整備工場は、BMW正規ディーラーで経験を積んだ整備士で構成されたBMW専門店です。
正規ディーラーよりもリーズナブルで、場合によっては正規ディーラーでは作業してくれないような部品をバラしてなどの特殊な修理も行っております。
また、BMWの高額修理が必要になった故障車の買取も実施しています。
ユーザーのあらゆる悩みに応えることのできるGNARLY automobileを是非ご活用ください。