BMWやMINIにお乗りの皆様の中には、エンジンから聞き慣れない異音が発生してお困りの方も多いのではないでしょうか。
エンジン作動時の異音は、車両の健康状態を示す重要なサインであり、放置すると深刻なトラブルにつながる可能性があります。
異音の種類や発生タイミングによって原因が異なり、適切な診断と早期対応が車両の寿命を大きく左右するため、症状を正しく理解することが重要です。
この記事では、BMW・MINI整備士の経験をもとに、エンジン作動時に発生する異音の種類と原因、適切な対処法から修理費用の目安まで詳しく解説してみたいと思います。
愛車のエンジン異音トラブルを早期に解決し、安心してドライブを楽しむためのお役に立てれば幸いです。
目次
エンジン作動時の異音にはどのような種類がある?
テンショナーのガタ
エンジンから発生する異音は、音の特徴や発生タイミングによっていくつかのパターンに分類されます。
異音の種類を正確に把握することで、故障箇所を推測し、適切な修理方法を選択することが可能になります。
以下に代表的な異音のパターンをご紹介いたします。
- 金属的な異音 – カラカラ、カチカチといった金属の接触音
- 高音の異音 – キーキー、キュルキュルといった甲高い音
- 低音の異音 – ゴロゴロ、ガラガラといった重低音
- 断続的な異音 – アイドリング時や加速時のみ発生する音
周期的な異音の特徴
エンジンから「カラカラ」「カチカチ」といった音が周期的に鳴る異音が発生する場合は、エンジンの回転する部品の摩耗などが原因となっていることが多くあります。
特にバルブクリアランスの異常やタイミングチェーンの伸び、カムシャフトの摩耗などが考えられ、放置するとエンジン内部の深刻な損傷につながります。
高音の異音が示す問題
「カラカラ」「キュルキュル」といった甲高い異音は、補機ベルトの劣化やテンショナーの不具合、オルタネーターやウォーターポンプなどの補機類のベアリング摩耗が原因となることが一般的です。
特にエンジン始動直後や雨天時に音が大きくなる場合は、ベルト系統のトラブルである可能性が高くなります。
低音の異音とその原因
「ゴロゴロ」「ガラガラ」といったエンジン始動時に良くなる重低音の異音は、エンジンマウントの劣化などによりエンジンが動いてしまいボディーなどに干渉してしまい発生することが多いです。
このような症状は放置すると他の部分にも影響が出る場合があるので放置せず、点検を受けて頂くことが重要です。
断続的な異音の診断
アイドリング時のみ、あるいは加速時のみ発生する断続的な異音は、特定の運転条件下でのみ顕在化する問題を示しています。
エンジン回転数や負荷によって音の大きさが変化する場合は、その変化のパターンが故障箇所の特定に重要な手がかりとなります。
異音の種類を正確に伝えるためには、どのような状況で音が発生するか、音の大きさや変化のパターンを詳しく観察し、記録しておくことが重要です。
エンジン異音の主な原因には何がある?
テンショナー取り外す前のエンジン内部の様子
エンジンから発生する異音には、機械的な故障から油脂類の問題まで、様々な原因が考えられます。
原因を正確に特定することで、無駄な部品交換を避け、効率的な修理を実現することが可能になります。
補機ベルトとテンショナーの劣化
エンジンの補機を駆動するベルトは、長期間の使用により劣化や伸びが発生します。
ベルトの表面にひび割れが生じたり、テンショナーの動きが悪くなると、適切な張力が保てず異音が発生したりします。
特にBMWやMINIでは、走行距離や使用年数に応じた定期的なベルト交換が推奨されています。
タイミングチェーンの伸びと摩耗
タイミングチェーンは、エンジンの心臓部ともいえる重要な部品です。
チェーンが伸びたりガイドレールが摩耗すると、ガラガラというような異音が発生し、放置するとバルブタイミングのずれによるエンジン不調や、最悪の場合はエンジン内部の深刻な損傷につながります。
ウォーターポンプとオルタネーターのベアリング不良
ウォーターポンプやオルタネーターなどの補機類には、回転部分にベアリングが使用されています。
ベアリングが摩耗すると「ゴロゴロ」や「ウィーン」という異音が発生し、最終的には部品の焼き付きや破損につながります。
エンジンオイルの劣化と油圧不足
エンジンオイルは、エンジン内部の潤滑と冷却を担う重要な役割を果たしています。
オイルが劣化したり量が不足すると、油圧が低下してエンジン内部の金属同士が直接接触し、異音が発生します。
オイルポンプの不具合やオイル油路の詰まりも、油圧不足の原因となります。
複数の原因が同時に発生している場合もあるため、総合的な診断により根本原因を特定することが重要です。
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今回のBMW F13 640i のオルタネータードライブベルトテンショナー交換修理により、エンジン作動時の異音は解消されました。 エンジン異音の原因はテンショナー内部のベアリング劣化やスプリング機構の劣化が主な原因で、放置すると駆動ベルトが外れてエンジンが停止する危険性があります。 専用ツールによる診断によって、テンショナーの張力異常とベアリング異音を確認し、純正OEM製オルタネータードライブベルトテンショナーへの交換で問題を根本的に解決いたしました。 交換作業では専用スペシャルツールを使用したファンシュラウドの脱着と、規定トルクでの確実な固定など、BMWマニュアルに基づいた正確な手順で実施しています。 異音を放置すると駆動ベルトが外れてエンジンが停止する危険性があるため、早期の対応が不可欠です。
故障箇所の特定方法と診断手順はどのようなもの?
ベルトを取り外しプーリーを1つずつ異音の確認
エンジン異音の故障診断は、段階的なアプローチにより効率的に原因を特定することができます。
適切な診断手順を踏むことで、修理時間の短縮と費用の最適化を実現できるため、専門的な診断が重要です。
STEP
異音の詳細確認と初期診断
まず、エンジンの異音発生状況を詳しく確認し、症状のパターンを把握します。
どのような音質か、エンジン回転数との関係、暖機状態による変化など、具体的な情報を収集します。
また、エンジンオイルの量と状態、冷却水の量なども確認し、基本的なメンテナンス状態を把握します。
STEP
聴診器による異音発生箇所の特定
異音診断用のツールを使用して、エンジン各部の音を詳しく点検します。
シリンダーヘッド、タイミングカバー、オイルパン、補機類など、異音が最も大きく聞こえる箇所を特定します。
また、オルタネータードライブベルト等を一時的に外して音の変化を確認することで、ベルト系統の問題かエンジン本体の問題かを判別できます。
STEP
油圧測定と内部点検
専用の油圧計を使用して、エンジンオイルの圧力を測定します。
規定値より低い場合は、オイルポンプの不良や内部摩耗が疑われます。
必要に応じてタイミングカバーやバルブカバーを開けて、チェーンの伸びやバルブクリアランスなど、内部の状態を直接確認します。
STEP
診断機器による総合診断
BMW専用診断機器を使用して、エンジン制御システムの状態を確認します。
バルブタイミングの学習値、カムシャフトセンサーの信号、エラーコードなどを詳細に分析します。
これらのデータから、機械的な問題だけでなく、制御系統の異常も含めて総合的に診断します。
| 診断項目 | 確認内容 | 必要工具 |
|---|
| 補機ベルト | 張力、ひび割れ、摩耗状態 | 目視点検 |
| タイミングチェーン | 伸び、ガイドレール摩耗 | 内視鏡、分解点検 |
| 油圧 | アイドリング時と高回転時の圧力 | 油圧計、診断機器 |
| 補機類 | ベアリング状態、回転抵抗 | 異音確認、単体部品点検 |
| 制御システム | エラーコード、学習値 | BMW専用診断機器 |
診断項目と必要工具
正確な診断のためには、専門知識と適切な工具が必要です。複雑な症状の場合は、BMW専門の整備工場での診断をおすすめします。
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修理費用と予防メンテナンスの方法とは?
エンジンオイルを交換している様子
エンジン異音の修理費用は、故障部品や症状の重篤度により大きく異なります。
早期発見と適切なメンテナンスにより、高額な修理費用を回避することが可能であり、定期的な点検が重要です。
| 修理内容 | 費用の目安 | 修理期間 |
|---|
| 補機ベルト交換 | 15,000円~30,000円 | 3時間~6時間 |
| テンショナー交換 | 30,000円~50,000円 | 3時間~6時間 |
| ウォーターポンプ交換 | 60,000円~100,000円 | 1日~3日 |
| タイミングチェーン交換 | 150,000円~300,000円 | 4日~7日 |
修理費用の目安(工賃込み)
予防メンテナンスの重要性
エンジン異音の発生を未然に防ぐためには、定期的な予防メンテナンスが効果的です。
エンジンオイルとフィルターの定期交換、補機ベルトの点検、冷却水の管理などを実施することで、部品の寿命を延ばすことができます。
特にBMWやMINIでは、メーカーが推奨する点検サイクルに従った適切なメンテナンスが、長期的な信頼性確保に不可欠です。
日常的な使用上の注意点
エンジンの寿命を延ばすためには、日常的な使用方法にも注意が必要です。
冷間時の急激な高回転使用を避ける、適切な暖機運転を行う、エンジンオイルレベルを定期的に確認するなど、適切な運転を心がけることが大切です。
また、異音が発生した場合は速やかに使用を中止し、専門家による診断を受けることが、深刻なトラブルを避ける最善の方法です。
- エンジンオイルは走行距離または使用期間に応じて定期的に交換する
- 補機ベルトの点検により、ひび割れや摩耗の初期症状を早期発見する
- 冷間時の急激な高回転使用を避け、適切な暖機運転を行う
- 定期点検により、エンジン内部の総合的な状態を確認する
予防メンテナンスにかかる費用は、故障修理の費用と比較すると非常に安価です。定期的なケアにより、長期的なコスト削減を実現できます。
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エンジン作動時の異音トラブルの対処法とまとめ
ウォーターポンプキャリアおよびクーラントパイプ交換後のエンジン内部の様子
BMWやMINIのエンジンから発生する異音は、様々な原因によって生じる複合的な問題です。
特に、金属音などの異音や高音の異音、低音の異音、断続的な異音など、症状のパターンによって原因をある程度推測することが可能です。
その原因としては、オルタネータードライブベルトとテンショナーの劣化をはじめ、タイミングチェーンの伸びと摩耗、ウォーターポンプとオルタネーターなどのベアリング不良、さらにはエンジンオイルの劣化と油圧不足などが挙げられます。
これらの不具合を診断する際は、まず異音の詳細確認から始め、次に聴診器による発生箇所の特定、さらに油圧測定と内部点検、そして診断機器による総合診断へと、段階的なアプローチで原因を特定していきます。
また、予防メンテナンスとして、エンジンオイルの定期交換や補機ベルトの点検、適切な暖機運転、年1回の専門点検を実施することで、高額な修理費用を回避し、エンジンの寿命を延ばすことができます。
- エンジンの異音には金属音などの異音、高音の異音、低音の異音、断続的な異音など様々な種類があり、音の特徴により故障箇所をある程度推測できる
- 診断は異音確認→異音の発生条件特定→原因特定と内部点検→診断機器による総合診断の4段階で実施し、専門的な工具と知識が必要
- 修理費用は補機ベルト交換からタイミングチェーン交換まで故障部品により大きく異なり、早期発見が費用削減の鍵となる
- エンジンオイルの定期交換、補機ベルト点検、適切な運転方法、定期点検により予防メンテナンスを実施し、故障リスクを軽減できる
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