この記事をご覧の多くの方が並行輸入品に魅了されていることかと思います。
並行輸入品は正規ルートとは異なるルートから仕入れ・販売された商品のことを指します。
安価で入手できるメリットがある反面、粗悪品や保証が受けれないデメリットがあるため、安全・安心を重視する自動車部品にはリスクが大きい選択肢と言えます。
本記事では、BMW・MINI整備士としての経験をもとに、並行輸入品を使用するメリットやデメリットを徹底的に解説します。
この記事を通じて、ユーザーの皆様がどちらを選ぶべきかの参考になれば幸いです。
並行輸入品とは?
並行輸入品とは、メーカーの正規代理店を通さずに輸入された商品を指します。
これにより、価格が抑えられることが多く、消費者にとっては手に入れやすい選択肢となります。
しかし、正規代理店を通さないため、不良品が多く保証やサポートが受けられない場合があることも覚えておく必要があります。
特に高価な商品や長期間使用する予定のある商品については、保証の有無が大きなポイントとなります。
並行輸入品の魅力
並行輸入品の最大の魅力は、何と言っても価格の安さです。
正規品と比べて大幅に安く手に入れることができるため、コストを重視するユーザーにとっては非常に魅力的です。
また、品数の多さに加え、廃盤になった部品も販売されていることがあるため、手軽に部品を調達したいユーザーにとっては最適な選択肢となるでしょう。
並行輸入品のリスク
しかし、並行輸入品にはリスクも存在します。
まず、前述の通り、購入後の保証やサポートが受けられない場合があることです。
正規代理店を通さないため、メーカー保証が適用されないことが多く、故障やトラブルに即座に対応することができません。
また、保証が適用されない場合は、新しい部品を調達するしかなく、作業が発生していれば新たな工賃が発生する可能性もあります。
並行輸入品は、商品を卸すまでの様々な工程を省略するため、検品がされていないことも多く、品質や性能にばらつきがあるのがその要因の一つです。
そして、最大のリスクは粗悪な部品を使用したことによって、関連部品がダメージを伴うことです。
例えば、粗悪なオイルフィルターを使用した場合、フィルターが適切に機能せず、エンジンオイルが汚れたまま循環してしまいます。
この結果、エンジン内部の部品(例えば、ピストンやシリンダー)が摩耗しやすくなり、最終的にはエンジン全体の寿命を縮めることになります。
また、粗悪なスパークプラグを使用すると、点火が不安定になり、エンジンの燃焼効率が低下します。
これにより、エンジンのパフォーマンスが悪化し、燃費が悪くなるだけでなく、エンジン内部の部品(例えば、バルブやピストンリング)に過剰なストレスがかかり、故障のリスクが高まります。
このように、粗悪品を使用することで、エンジンの関連部品にダメージを与え、最終的にはエンジン全体の性能や寿命に悪影響を及ぼすことがあります。
並行輸入品を使用した際に引き起こす事例
当整備工場でも様々な症状に出くわすことがあります。
ここではその中のごく一部ですが、並行輸入品のエアスプリング、バッテリー、そして偽造されたDENSOのスパークプラグの事例をご紹介いたします。
事例①:ねじ山加工がされていないエアスプリング
初めにご紹介するのは、メーカー元が不詳のエアスプリングのご紹介です。
左が問題のあるエアスプリング、右がメスラオートモティブのエアスプリングです。
まず問題のあるエアスプリング(左)ですが、ねじ切り加工というねじ山を作る加工がされていないため、取り付けることができません。
他方のエアスプリング(右)には金属部品を使用したねじ切り加工がされていることが見て取れます。
純正部品であっても金属部品は使用せず本体に直接、ねじ切りがされていることがほとんどです。
メスラオートモティブの作りは非常に手が込んでいるので、我々整備士でも安心して使用できる部品メーカーの一つです。
事例②:製造日が古い劣化したVARTAのバッテリー
次にご紹介するのは、お客様がご自分でネット販売でご購入されたVARTAのバッテリーです。
左が問題のバッテリー、右が正規品のバッテリーです。
画像を比較していただくと分かりますが、問題のバッテリー(左)と正規品のバッテリー(右)のスタート容量が大きく異なります。
お客様がバッテリーを持ち込まれた際に埃が被っていたことから長期在庫による劣化を疑い、計測してみたところ上記の結果となりました。
製造日が古かったり、保管の際に充電されていないバッテリーは、使用されていなくても内部の化学反応が進行し、容量が減少したり性能が低下したりするため、劣化の兆候が見られることがあります。
BMWにはその車種やモデルに適合した部品を採用しなければならないため、この事例のような低い電圧のバッテリーを使用すると、エンジンの始動が困難になり、電気系統の不具合が発生しやすくなります。
事例③:ロシアで偽造されたDENSOのスパークプラグ
最後にご紹介するのは、デンソーとして偽造したスパークプラグを販売していた事例です。
左が偽造された製品、右が本物の製品です。
これらデンソーと偽って偽造したのはロシアにある2つの企業とのことで、裁判ではデンソーは勝訴しています。
今回はロシアにある企業とのことですが、我々がよく目にする模倣品のほとんどは中国で製造されています。
輸入車の部品は高価なものが多いため、費用に目がいきがちになりますが、長期間維持することを考えるとコストパフォーマンスは間違いなく正規品の方が良いです。
参考資料:DENSO wins Lawsuit against Counterfeit Sellers
正規品を使用するメリット
正規品を使用する最大のメリットは、何と言っても安心できる品質です。
正規品は厳しい品質管理を経て出荷されているため、製品の性能や耐久性においても優れています。
また、メーカーの正規代理店を通じて購入するため、購入後に故障やトラブルが発生した際にも迅速に対応してもらえます。
当整備工場でも正規品もしくはそれに代わる社外部品を使用することはありますが並行輸入品はまず使用することはありません。
社外部品は、メーカー純正部品と比べて価格も低く、特に廃盤製品を手にしたい場合には重宝する選択肢の一つです。
参考資料:阿部商会
並行輸入品の魅力とリスクのまとめ
今回は、並行輸入品の魅力とリスクを正規品と比較してお伝えしました。
価格を重視するなら並行輸入品が魅力的ですが、安心感を手にするなら間違いなく正規品です。
前述の通り、当整備工場では並行輸入品を使用することはまずありません。
それは整備士の観点から、車の整備は安全が第一だからです。
その次に、安心、そして最低限のコストと最高のパフォーマンスを求めて部品を選定します。
最終的に、ご自身にとって何が最も重要かを考え、慎重に選択されることをおすすめします。