この記事をご覧のBMWユーザーの皆様の中には、並行輸入部品の圧倒的な価格の魅力に惹かれている方も多いのではないでしょうか。
BMWのメンテナンスにおいて、部品選択は車両の性能と安全性を左右する極めて重要な要素です。
並行輸入部品は確かに価格面では大きなメリットがある一方で、品質面での不安や保証の問題など、BMW整備の現場では見過ごせないリスクも潜んでいます。
実際に私たちの整備工場でも、BMW F15のユーザー様が節約を考えて並行輸入部品のエアスプリングを選択されたものの、わずか2週間で不具合が発生し、結果的に純正部品での修理が必要となり、当初予定の約2倍の費用が発生したケースがありました。
粗悪な部品によってBMWの他の重要部品にダメージが波及し、車両全体の性能低下や資産価値の減少を招く危険性は決して軽視できません。
このような失敗を防ぐため、本記事では元BMW整備士としての豊富な経験をもとに、並行輸入部品と正規部品の根本的な違い、実際の整備現場で発生したトラブル事例、そして安全で確実な部品選択の方法について詳しく解説してみたいと思います。
BMWユーザーの皆様が最適な部品選択をするための参考になれば幸いです。
Yusuke Yotsuda
この記事を書いたスタッフ
GNARLY automobile(ナーリー オートモービル)のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます!私はこの大好きなBMW/MINIの整備を通じて、お車のサポートは勿論、お客様とより良いお付き合いをさせて頂ければと思っております。その様な関係を築ける様、精一杯のサービスをご提供させていただきますのでお気軽にご相談ください。
BMWグループ認定 保有資格
目次
並行輸入部品に関する基礎知識
並行輸入部品のエアスプリング 13,000円
並行輸入部品のバッテリー 20,000円
並行輸入部品とは、メーカーの正規代理店を通さず、独自の流通ルートで輸入される商品を指します。
これに対し正規部品は、メーカー認定代理店が厳格な品質管理のもとで取り扱う製品です。
並行輸入部品の最大の魅力は圧倒的な価格の安さで、正規部品の半額以下で購入できることも珍しくありません。
しかし、BMWのような精密な車両では、部品一つひとつの品質が車両全体の性能に直結するため、価格だけでなく信頼性も重要な判断要素となります。
特にBMWには高度なエンジン制御システムやアダプティブサスペンションが搭載されており、これらのシステムが最適に機能するためには、設計基準を満たした品質の部品が不可欠です。
並行輸入部品を使用することで生じるリスク
並行輸入部品を使用することで生じるリスクをイラスト化したもの
品質管理の不備による保証対象外のリスク
並行輸入部品の使用により発生する最も深刻な問題は、メーカー保証やアフターサポートが一切受けられないことです。
正規代理店を経由しない流通経路のため、故障や不具合が発生した際の迅速な対応が困難になり、修理費用は全額自己負担となってしまいます。
さらに、並行輸入部品で発生した不具合が原因で他のBMW部品に損傷が及んだ場合も、BMW保証の適用外となる可能性が高く、結果的に高額な修理費用が発生するリスクを抱えることになります。
製造元不明の製品や偽造品が混入するリスク
並行輸入部品では、製造元不明の製品や偽造品が混入するリスクが無視できません。
正規部品と見た目が酷似していても、内部構造や材質が大きく異なる粗悪品が紛れ込んでいることがあり、使用後に初めて性能不良が判明するケースも珍しくありません。
また、長期間の不適切な保管環境により、高温多湿やほこりの多い環境での劣化が進行している可能性もあり、未使用であっても本来の性能を発揮できない状態となってしまう危険性があります。
万が一、不良品に当たった場合の最大のリスク
並行輸入部品で最も恐ろしいのは、品質の劣る部品によってBMWの他の重要部品にダメージが波及することです。
例えば、品質の劣るオイルフィルターを使用すると、フィルター機能が不十分でエンジンオイルが汚れた状態で循環し続け、エンジン内部のピストンやシリンダーといった精密部品が異常摩耗を起こし、最終的にはエンジン全体の寿命を大幅に短縮してしまう恐れがあります。
また、品質の劣るスパークプラグの場合、点火性能が不安定になってエンジンの燃焼効率が悪化し、エンジン内部のバルブやピストンリングに過度な負荷がかかり、重大な故障リスクが高まってしまいます。
BMWユーザーの部品持ち込みによる整備トラブルは決して珍しいことではありません。最近も他の整備工場からの相談で、ユーザー様持ち込みのエアサスペンションを取り付けたところ、わずか1ヶ月で車高が下がってしまい、同じ部品の再調達も困難という困った事例がありました。
実際にあった並行輸入部品の事例
私たちの整備工場では、並行輸入部品に関連した様々なトラブルに遭遇してきました。
ここでは、BMW整備の現場で実際に発生した並行輸入部品のエアスプリング、バッテリー、そして偽造されたDENSOスパークプラグの具体的な事例をご紹介します。
事例1:取り付け不可能だったねじ山未加工のエアスプリング
ネットショップで購入したエアスプリング
メスラオートモティブのエアスプリング
最初にご紹介するのは、製造元不明のエアスプリングで発生したトラブル事例です。
左側が問題となった並行輸入部品、右側が信頼性の高いメスラオートモティブ製のエアスプリングです。
問題の並行輸入部品(左)を詳しく検査したところ、取り付けに必要不可欠なねじ山加工が全く施されておらず、BMWへの装着が物理的に不可能な状態でした。
一方、メスラオートモティブ製(右)では、専用の金属部品を使用した精密なねじ切り加工が確認できます。
純正部品でも通常は本体に直接ねじ切り加工が施されていますが、メスラオートモティブはさらに手の込んだ金属部品を採用しており、私たち整備士が安心して推奨できる信頼性の高いメーカーの一つです。
この問題のエアスプリングはネットショップで購入されたもので、製造元の特定すらできませんでした。エアスプリングは高価な部品のため、使用できない部品の再調達と再作業により、大幅な費用が発生してしまいました。
事例2:長期保管により劣化したVARTAバッテリーの性能不良
次にご紹介するのは、BMWユーザーがネット通販で購入されたVARTAバッテリーで発生した問題です。
左側が問題となった並行輸入部品、右側が正規部品のバッテリーの性能測定結果です。
両者の画像を比較していただくと明らかですが、並行輸入部品(左)と正規部品(右)ではスタート容量に大きな差が生じています。ユーザーがバッテリーを持ち込まれた際、表面に埃が積もっていることから長期在庫による劣化を疑い、詳細な性能測定を実施した結果が上記の通りです。
製造から時間が経過したり、適切な保管環境で管理されていないバッテリーは、未使用であっても内部の化学反応により容量低下や性能劣化が進行し、本来の性能を発揮できない状態となってしまいます。
BMWには車種ごとの厳格な電気系統仕様があるため、このような性能不足のバッテリーを装着すると、エンジン始動の困難や電気系統の不具合が発生しやすくなってしまいます。
後日購入先に確認したところ、2年以上も倉庫に保管されていた並行輸入部品だったことが判明しました。ユーザー様のご要望があれば取り付け作業は行いますが、BMW整備士として決してお勧めできる状態ではありません。
事例3:ロシアで製造されたDENSO偽造スパークプラグ
偽造されたスパークプラグ
正規部品のスパークプラグ
最後にご紹介するのは、DENSOブランドを騙った偽造スパークプラグの深刻な事例です。
左側が偽造された製品、右側が本物のDENSO製品です。
これらの偽造品はロシアの2社によって製造・販売されており、裁判ではDENSOが勝訴を収めています。
今回はロシア企業の事例でしたが、BMW整備の現場で目にする模倣品・偽造品の大部分は中国で製造されているのが実情です。
見た目では判別が困難な精巧な偽造品も存在し、使用後に初めて性能不良が判明するケースも少なくありません。
BMWの部品や工賃は確かに高額になりがちですが、間違った部品選択によってBMW自体の資産価値が下がってしまうケースも珍しくありません。特にスパークプラグが車種仕様に適合していない場合、燃焼室内で異常燃焼が発生し、最悪の場合はエンジンの深刻な損傷につながる危険性があります。
粗悪な並行輸入部品と高額な純正部品を避けるOEM部品・社外部品の存在
品番ステッカーによる品質管理
保証が受けられる証明書
粗悪な並行輸入部品と高額な純正部品の間には、コストと品質のバランスに優れたOEM部品・社外部品という賢明な選択肢があります。
OEM部品は、BMW純正指定メーカーが製造する部品で、純正品と同等の品質基準を満たしながら価格面でメリットがある優れた選択肢となります。
信頼できる社外品については、Continental、DENSO、Boschなど、国際的な品質認証を取得した有名メーカーの製品が安心です。
これらの製品は、正規代理店ネットワークを通じて販売されるため、万が一の故障時にも迅速で確実なサポートを受けることが可能です。
特に廃盤となった部品を入手したいBMWユーザーにとって、信頼性の高い社外品メーカーは貴重な存在で、純正品が入手困難な場合の確実な代替手段となります。
私たちが信頼関係を築いている部品供給パートナーには、阿部商会様や東邦自動車様があります。これらの企業は日本でも屈指の正規代理店として、安心・安全な部品を安定供給されています。充実した保証制度とサポート体制により、私たち整備士にとって信頼できる自動車部品のプロフェッショナルです。
BMW整備で並行輸入部品を使用する危険性のまとめ
メーカー保証を示すステッカー
スタート容量を満たしたバッテリー
G-PARTS
BMW整備士のための部品販売専門店 | G-PARTS
G-PARTSは、BMW整備士のための部品販売専門店です。BMWに最適な正規パーツとBMW整備のノウハウを提供しています。純正部品に代わるOEM部品と正規ディーラーのノウハウを用…
並行輸入部品と正規部品の違いについて、BMW整備士の豊富な経験をもとに詳しく解説してまいりました。
並行輸入部品は圧倒的な価格の安さが魅力ですが、品質管理の不備や保証・サポートの欠如という重大なリスクを抱えています。
実際の整備現場では、取り付け不可能なエアスプリング、性能劣化したバッテリー、偽造されたスパークプラグなど、深刻な問題が現実的に存在します。
品質の劣る並行輸入部品が単体の故障だけでなく、BMWの他の重要部品にダメージを波及させ、車両全体の性能低下や資産価値の減少を招く危険性があることを忘れてはいけません。
しかし、粗悪な並行輸入部品と高額な純正部品の間には、OEM部品・社外部品という優れた選択肢があります。
Continental、DENSO、Boschなど信頼できるメーカーの製品は、純正品と同等の品質を保ちながら価格面でのメリットも提供します。
元BMW整備士として、BMWの整備において最も重要なのは安全性の確保だと確信しています。
最終的には、BMWユーザーの皆様ご自身にとって何を最も重視されるかを十分にご検討いただき、慎重な判断をされることをお勧めいたします。
- 並行輸入部品は正規部品の半額以下で購入可能で圧倒的な価格メリットがある一方、品質管理プロセスを経ていないため粗悪品のリスクや保証・サポートが受けられないという重大なデメリットがある
- 実際の整備現場では、初期費用の安さが逆に高額な出費につながるケースが頻発している
- 並行輸入部品の品質不良は単体の故障だけでなく、BMWの他の重要部品(エンジン、バルブ、ピストンリング等)にダメージを波及させ、車両全体の性能低下や資産価値の減少を招く危険性がある
- ねじ山未加工のエアスプリング、長期保管により劣化したバッテリー、偽造されたDENSOスパークプラグなど、物理的に取り付け不可能な製品や偽造品の混入リスクが現実的に存在する
- 正規部品は厳格な品質管理基準をクリアし、メーカー正規代理店ネットワークによる迅速で確実なサポートが受けられるため、長期的な安心感と信頼性を求めるBMWユーザーには正規部品が最適な選択である
あわせて読みたい
【BMWのOEM部品とは?】純正部品との違いや当店の購入先の評価までBMW整備士が解説
本記事では、BMWのOEM部品について、その基本的な仕組みから純正部品との具体的な比較、そして信頼できる購入先まで、元BMW整備士の経験をもとに詳しく解説してまいりました。OEM部品は純正部品と同等の品質でありながら、コスト削減ができるというメリットがあり、特に保証期間を過ぎた車両では有効な選択肢となります。品質面では純正部品と同等でありながら、価格面では5%程度のコスト削減が可能で、純正部品は全国ディーラーネットワークで確実な調達ができる安心感もあります。重要なのは、信頼できる販売先から適切なOEM部品を選択することで、阿部商会や東邦自動車のような実績豊富な専門業者、またはG-PARTSのようなBMW整備に特化した専門店を活用することで、安心して高品質なOEM部品を入手できます。愛車BMWの性能を維持しながら、適切な部品選択により、長期間にわたって安全で快適なBMWライフを楽しんでいただけることを心より願っています。
- 専門店による高額買取
- 不動車や事故車なんでも買取
- 査定依頼のみでもOK
GNARLY automobileでは、BMW専門の買取サービスを実施しております。故障車や不動車、電子システムに不具合のある車両でも高額で買取いたします。修理費用でお困りの方は、是非一度、無料査定からお問い合わせください。